致死率が高いのは高齢者なのだから、高齢者のみ自粛して若い世代は自粛必要なし、という論調もありますが、どうなるでしょうか。感染症数理の素人がシミュレーションしてみました。
感染症数理に詳しい方、誤りなどご指摘いただけるとありがたいです。
SIRモデルと次世代行列
感染症数理の基本としてSIRモデルというものがあります。これは専門ではないので省略しますが、以下の2つのスライドがわかりやすかったように思います。
感染症の数理(平成20年度第7回例会「医療とアクチュアリー」講演 東京大学大学人数理科学研究科 稲葉寿)
肝は、
・ある感染者数ベクトルに対して次世代行列をかけると次世代における新規感染者数になる。
・次世代行列を累乗していくと、新規感染者数はその正の固有ベクトルに収束していく。
というあたりでしょうか(それ以上のことは理解できてません)。
もう一つ、西浦先生の試算で「R0=2.5のまま無策で過ごすと40万人亡くなる」という試算がありましたので、そのR0=2.5を基本にしてみたいと思います。試算において40万人亡くなるうちの内訳は明らかにされなかったように思います。
今回、感染症数理の素人として、非常に単純化したモデルで検討してみたいとおもいます。
・若者、高齢者の2状態モデル
・若者10万人、高齢者10万人
・感染者初期値は若者1人、高齢者1人
・若者→高齢者の生産と高齢者→若者の生産は等しい
・SIRモデルで最終規模を計算
R0=2.5となる次世代行列


これは均一なモデルです。単一状態のSIRモデルに一致するはず。モデル①


これは、世代内では交流が盛んで、世代間ではあまり盛んでないというモデル②
この場合、


続いて、若者は世代内交流が盛んであるというモデル③
モデル①
ノーガードでは98%ずつ感染する計算になりました。
高齢者9割自粛すると以下の次世代行列です。

この場合、R0=1.26で、最終規模は若者40%、高齢者5%
モデル②
同じくノーガードなら98%ずつ感染します。
高齢者9割自粛すると次世代行列は以下。

R0=2.0で、最終規模は若者87%、高齢者5%
モデル③
ノーガードなら若者99%、高齢者93%が感染します。
高齢者9割自粛すると次世代行列は以下。

この場合R0=1.9。最終規模は若者84%、高齢者9%。
まとめ
繰り返しますが、感染症数理の素人による計算です。
かなり単純化したモデルですし、実際何歳で分けるべきかも分からなければ、そもそもこの次世代行列がどのくらい尤もらしいものなのか、また、要介護者や若年世代との同居者などもいる中で9割減が可能なのか、また若者が8-9割感染するなかで致死率0.02~0.2%を許容できるのかといった多くの問題はありますが、
メリハリの効いた自粛によって、最終的な集団免疫における感染者数は変わってきうる。ということは言えそうな気がします。
願わくば、複数のシナリオにもとづいたこのような試算を政府に出していただいて、どういう戦略が可能なのか、社会で前向きに議論できると望ましいと思います。