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2020年に読んだ本[9] 女性学・男性学 ジェンダー論入門第3版

書評

キッズラインの男性シッター禁止は差別なのか、考えていて手にとった本。有斐閣だけど法律家向けではなく、有斐閣interestという一般向けのシリーズ。読みやすい本だった。

たとえば、「アンパンマン」のような、保護者にとっても、一見安心してみえる番組でも(実際は、詳しく分析すれば社会の異物であるバイキンマンを暴力で排除するという、けっこう問題ありのストーリーパターンがひそんでいるのだが)、じっくりと見ていくと、はっきりジェンダーの構図がみてとれる。アンパンマンをはじめカレーパンマンやジャムおじさんなど、男の登場人物は多様な能力をもった存在として描かれているのに、女の登場人物は、バタコさんに代表されるやさしいタイプや可愛らしいキャラクターか、わがままなドキンちゃんタイプに、ほとんど単純に二分されているのである。

あまり意識したことがなかったが、たしかに主人公級のキャラクターは男性が多いし、その目で見ると「女の子らしい」ステレオタイプなキャラクターが多いような印象だ。

このような(ひとつひとつは一見すると大したこと無い)刷り込みが、社会の至るところに見られる。「男の子なんだから泣くのはやめなさい」「女の子には優しくしなきゃダメよ」といった発言も、その一端を担っているかもしれない。

女性が好き、男性が好きといった性的な嗜好は個人の自由だしそれは差別ではないはずだ。しかし、会社が「男性だから雇います」「女性だから雇います」としてしまうとそれは性差別になりかねず、慎重さが求められると感じる。

では、個人の客が「女性シッターが良いな」「男性シッターが良いな」と希望していて、会社が人気のあるどちらかのスタッフばかりを登用する場合はどうか。

キッズラインが男性シッターの取り扱い停止を発表したとき、多くの非難の声が上がった。

その一方で、「女性スタッフのみ」を最初から売りにしているベビーシッターサービス(例:マミー東京)は存在していて、特に非難されたという声は聞かないし、何なら利用している方もいるかも知れない。

性差があることを前提として、それが不利益にならないように努力する、そして性を根拠に判断することをできるかぎりなくしていく、ということしかないのかもしれない。

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