こちらの記事(最初はYahooニュースで読んだのだが、そちらはもう掲載終了していた)で知ったスウェーデン在住の久山葉子さんのエッセイ。この本を読んで、我が家の北欧製品をリストアップしてみたことは以前書いた。
久山さん家族が海外移住を考えた際に、なぜスウェーデンに決めたのかはちょっぴりベールに包まれていて、『夫が「葉子がスウェーデン語できるしちょうどいいじゃん」と軽いノリで言い出したのが発端だったと思う』とのこと。以下、本文中で印象に残ったエピソードをいくつか紹介したい。
国の保育指針
就学前学校は子供ひとりひとりがこれらのの応力を発達させることに発達させることに務めなければならない。
p129-130
・寛容さ、敬意、連帯感、責任感
・他人の状況に配慮したり、共感したりできる能力。そして、他人を助けたいという気持ち
・日常に存在する生き方への課題や道徳的ジレンマに気づき、自分で考え、意見を持つ能力
・性別、民族、宗教などの信仰、性的指向、障害にかかわらず、人間には全員同じ価値があるということへの理解
・生きるものすべてへの経緯と、自分の周囲の環境に対する配慮
この5項目が保育の目的として国の保育指針に定められているのだと言う。そしてこれが机上の理念にとどまらず、スウェーデンのいたるところで、特にあらゆる年齢の教育現場で、この5点が重視されているそうだ。
子供をカテゴリー分けすることは厳に慎むべきものと考えられていて、例えば「男の子だから」「女の子だから」といった言い方をすることはないとのこと。これはぜひ見習っていきたい。
先日、このようなオコエ選手のツイートもあったが、人をカテゴリー分けせず、すべての人間に同じ価値があると知ることは日本においてはあまり教えられないことかもしれない。そして性差別が日本社会に根深く残っていることは言うまでもない。
就学前教育の在り方
スウェーデンでは保育園に通う間、親が子供にお勉強的なことをやらせることはないらしい。子供の方から積極的に文字や綴に興味を覚えれば教えることはあるそうだが、フラッシュカードでアルファベットを覚えたり、九九の表を暗記させたりすることなどはないそうだ。それは、「小さいうちに無理やり学習させることで、”勉強ってつまらないもの”、”苦しいもの”というイメージを植え付けてしまったら一巻の終わり、と考えている親が多い」とのこと。
ここも、ぜひ取り入れたいところだ。とはいえ日本では就学前から読み書き算数といった面の教育が盛んで、それ自体は悪いことではないと思うし、周囲ができる中で自分だけできないと劣等感を持ってしまうかもしれない。だから家で勉強をみたり幼児教室に通ったりはしつつも、決して強要はせず、”勉強って苦しいもの、つまらないもの”という印象を持たせてしまうことがないように気をつけていきたい。
貯金額
240万円以上の貯金がある人は30%程度と書いてあった。これは日本人の貯金額よりも少ないのではないか。スウェーデンでも年金に対する不安が高まり、貯金額が増えつつある中でこの額なのだそうだ。これは福祉が充実しているからこそ貯金がなくても生活していけるということの裏返しでもあるのかもしれない。日本も将来への不安が高まりつつあり、老後を迎えるまでに2000万円の貯蓄が必要という試算もあった。福祉で対応するスウェーデンと個人の貯蓄で対応する日本とどちらが良いかは良し悪しだが、家計の金融資産が増えすぎてしまうのも考えものである。

この本をお勧めする人、お勧めしない人
全体を通して、日本とは異なる考え方に触れることができる良い本だった。久山さん家族が異文化に戸惑いながらもその違いを受け入れ、スウェーデンの生活に馴染んでいく様が活き活きと描かれていて、つい引き込まれてしまった。
最後の章にスウェーデンで苦労したことや日本ほど恵まれていない面なども書かれているが、おそらくそこに書かれているだけではない大変なこともたくさんあるのだと思う。この本は、この本を読んで「スウェーデンすごい!明日からこの考え方でいく!」となってしまう人や、「いやいやスウェーデンはスウェーデンのやり方であって、日本では無理でしょ」と思うような人にはあまり向いていないと思う。「日本では○○が常識だけど、××という考え方もあるのか、少し取り入れてみようかな」と違った考えを少しずつ取り入れられる人に向いているかもしれない。