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マンキューで考えるコロナ危機の経済学

書評

まず、R<1を維持する、ということを前提において議論を進める。蔓延を許容する場合は以下の議論は成り立たない。実行再生産数は感染の結果に対しては1の前後で大きく異なった挙動を取る一方で、行動変容や感染対策の成果としてはリニアな挙動を示し、あくまで接触・感染機会の総和が特定の閾値に達するかどうか、といったイメージに近い。

感染には外部性がある、とは「コロナの危機の経済学」で小黒教授が指摘した通りであり、行動の総和を制限するためには、外部性を内部化する必要がある。

行動変容をもたらすインセンティブとしては、
・経済的インセンティブ
・社会的インセンティブ
・道徳的インセンティブ
があるとされるが、日本の新型コロナ対策としてはこの中でもっぱら、道徳的インセンティブ(大事な家族をまもろう)と、社会的インセンティブ(感染を持ち込んだら村八分にされる)による行動変容を訴えてきた。

経済的インセンティブに関しては時短協力金以外はほぼ存在せず、GoToに至っては、むしろ移動・接触を促進するようなインセンティブを与えている。長期化する場合は飲食税・移動税などを導入することでロックダウンなどの強硬手段を回避して安定した行動変容が図れるかもしれない。

また、コロナで難しいのは、行動自体は0にする必要はなく、実行再生産数がギリギリ1を下回る程度が最善、というところである。よって事前に完全なインセンティブ設計を行うことは難しく、感染拡大・縮小によってインセンティブを強める・弱めるといった細かな調節が必要であったり、自身の感染リスクにレバレッジをかけるようなビルトインスタビライザーとして働くような仕組みが求められるのかもしれない。しかし後者においては、検査を受けずに感染を隠蔽するインセンティブが生じてしまうのが難しい。

価格弾力性と補助金の帰着

また、GoToトラベルでは旅行費用の50%という思い切った額のキャンペーンが実施された。その分宿泊費用を値上げした宿もあり、便乗値上げではないかといった声もあったようだ。

この問題は「税(補助金)の帰着」の問題であり、弾力性を考えると納得がいく。基本的に価格弾力性が低い側に帰着する、という原理だ。

GoTo前でもほぼ満室になるような人気宿では、供給の価格弾力性は低い。よってこの場合補助金は価格の上昇に用いられ、供給側に帰着する。一方でGoTo前には空室が目立つような宿では供給は増える余地が大きく価格弾力性がある。よってこの場合は人気宿に比べて需要側に帰着することが多い。

よって、満室経営の人気宿においてGoTo分値上げすることは経済的合理性のある判断と言える。

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