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2020年に読んだ本③「中堅どころが知っておきたい 医療現場のお金の話」

書評

意外と知らない医療現場のお金の話。病院は果たしてどのような金銭的インセンティブのもとで診療しているのか、非医療者が読んでも面白いかもしれません。

この本はkindle版はありませんが、kindle unlimitedが3ヶ月299円のキャンペーン中(2020年5月)です。重い腰をあげて契約してみました。

DPC=包括=定額だから入院が伸びても入院費は変わらないという誤解

初期研修のころは知りませんでした。あくまで、疾患や治療ごとに(日数が経過するにつれて3段階の)1日あたりの診療報酬が決められているので1日伸びたら1日分増えます。

とは言え治療にかかる経費のほとんどは、退院が決まっている患者に1日1回看護師が具合を聞きに行くことにかかっているのではなく、手術や手技、集中的な投薬といった治療初期にかかりますから、病院側にとってはあまり

平均在院日数というインセンティブ

というわけで、患者側にも病院側にも在院日数短縮のインセンティブはあまりありません。

病院は病院機能ごとに区分されていて、入院基本料に差がついています。そこには「平均在院日数」という縛りがあり、これがある一定基準を上回ると入院基本料の区分があがり、収益に大きな差がつく、という仕組みになっています。

したがって、平均在院日数を基準ギリギリに保つ、という戦略になるわけです。

患者側も1〜3割負担でそこまで負担感はありませんし、病院側もこの退院直前の期間はベッドが空いている限り損にはならないので、在院日数を短縮するインセンティブは今の診療報酬ではあまり差がないかもしれません。しかしこれ以上診療報酬を下げると患者側にとっては入院費用が安くなるので、「退院してください」という同意を取るのがより難しくなっていくかもしれませんね。

この部分に関しては、支払側である保険者の一人負けです。

こういう必要性が高くない部分に対しては、「1−3割」という定率を維持するのではなく、率を変えることで病院・患者ともに1日も早い退院を目指すインセンティブになると良いのですが。

適時調査・指導・監査の違い

この本で一番役立った部分です。医療の外部評価には、

・診療報酬に関するもの
  適時調査、指導、監査
・良質な医療のためのもの

  立入検査

の2種類があるとのことです。

「監査」という言葉しか知りませんでしたが、おそらく立入検査のことを指していたのだと思います。立入検査は医療監視とも呼ばれ、病院が医療を提供する上で医療法などに基づく適切な体制を整えているかに焦点をあてたもので、医療法第25条第一項の規定に基づいて保健所などが行うもので、原則として年1回行われます。

多くの医療者にとって関わりが大きいのは、診療報酬に関わるものより、立入検査の方ではないでしょうか。

知りたかったこと

本の中で、赤字である病院も多いという記載がありました。赤字病院はどのように存続しているのか、その辺りの突っ込んだ記載はありませんでした。いま話題の内部留保で食いつないでいるのか、自治体などからの補助金待ちなのでしょうか。

まとめ

医療機関におけるお金の流れ、金銭的なインセンティブがどうなっているのか、概観できる本だと感じました。個々の事項はインターネットでも調べられますが、基本的なことが網羅的に一冊にまとまっていているのは本のメリットだと思います。

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