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2020年に読んだ本[10] MMTによる令和「新」経済論

書評

ほとんど誰も見向きもしなかった経済理論が、ここまで激しく「バッシング」されるのは、そこに、誰もが納得する「真実」があるからと考えざるを得ない。

(太字は本文ママ)

初っ端からこれだ。もはや宗教では…。

MMTに関しては
・自国通貨発行国であればデフォルトはしない
・財政赤字は通貨発行量として捉えるべき
・インフレターゲットの達成を目安に通過発行量を調整
・ハイパーインフレが起きそうになったら課税強化
・デフレ不況下の失業には、ふんだんな通貨発行を元に完全雇用の創出(JGP)
といったあたりが、その主軸のようだ。

そして、インフレすれば好景気になって全てがうまくいく、といった論調(のように読めた)。

最初の二項はひとまず良い。一旦民間を経て日銀が国際を買い上げることははたして財政ファイナンスなのかといった議論もあるようだが、そこは措いておく。

・インフレターゲットの達成を目安に通過発行量を調整
問題はここからだ。果たしてどの程度の財政赤字=通貨発行を考えているのだろうか。

本文中に具体的な数字はほとんど出てこない(!)のだが、一部に10兆円~15兆円の財政出動という記載がある。例年30兆円規模の財政赤字を行っている日本において、10兆円~15兆円追加したところでインフレが生じるのだろうか。すでに公債残高は900兆円を越えている。そこに10兆円~15兆円を加えることで、はたして全てが上手くいくのだろうか

物価には流通する通貨の量だけでなくその回転率も影響すると別の教科書で読んだ。財政出動を増やしても貯金に回る部分が大きく、2%のインフレを達成するにはさらに大きな財政出動が必要となるかもしれない。

・ハイパーインフレが起きそうになったら課税強化
これは世代間格差を招きうると思う。MMTerの方々は、「財政赤字は将来世代の借金」という論調を見ると、「返す必要無いのに」と発言することが多い気がするが、返す必要はなくても世代間格差を生じうる。インフレが起きるパターンと、インフレが起きないパターンで考えたい。

インフレが起きない:財政赤字はそのまま民間の貯蓄として積み上がっている。つまり周囲が2000万3000万の貯蓄を持つ世界に、貯金ゼロの若者が放り出されるというディストピアかもしれない。

インフレが起きる:課税をして解熱したい。貨幣の総量が増えたことによるインフレなので、貨幣の総量を減らさなくてはいけない。これはフローに課税するのではなく、ストックに課税するのではなければ話が合わないのではないか。貨幣の総量を減らすほどのフロー課税をすれば、やはり将来の現役世代は重税に喘ぎ、すでに稼ぎきって貯蓄を持つ世代が有利になる。果たして資産課税がタイミングよく実現できるのだろうか。

よって、MMTによる政策は、ちょうど良い具合にマイルドなインフレが起き、給与も上がって、という全てがうまく噛み合った相当に理想的な状況でなければ成立しないfragileな提言のようにも思う。

・デフレ不況下の失業には、ふんだんな通貨発行を元に完全雇用の創出(JGP)
これ、理念は良いですが、果たしてそううまく仕事があるんですかね…。他の雇用を奪わないように、民間と競合する分野ではなく公共財や環境問題などに対応する雇用を、なんて書いてありますが。

そして民間で雇用されない、労働者として一番価値が低い層を集めてきて、まともに働いてくれるとも思い難いのですがそのあたりは解決策があるのでしょうか。正直言って、足手まといになるくらいなら、ベーシックインカムで暮らしていてもらったほうが世のためかもしれません。「働く権利がある」という意味で、職を保障するということならまだ分かりますが。

以上、総じてあまり納得できない本でした。

そもそも経済学者ではなかった

よくこの界隈で名前をお見かけするので、勝手に経済学者かと思っていたのですが、専門は都市工学のようです。あまり読む必要なかったかな…。

次に読みたい本

というわけなので、次はこの本を読もうと思う。

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