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2020年に読んだ本[7] 子どもの貧困II

書評

子供の貧困研究について第一人者である阿部彩先生の本。前著は現状把握だったが、本著は一歩踏み込んでいかに解決すべきかに向けた提言となっている。

新型コロナ対策では、当初は「所得が減少した世帯に30万円給付」という案から、「全員一律に10万円給付」に変更された。このような対策には、「選択的か普遍的か」「現物給付か現金給付か」という大きな問題がつきまとう。

選択主義はスティグマを生みやすいという点も懸念点だ。これはまさに生活保護で問題になっていることで、生活保護に対するバッシングを生み、保護を受けてしかるべき人が保護を受けないという現状を生んでいる。生活保護の捕捉率は約15%とも言われており、つまり、保障されるべき最低限度の生活が保障されていない層が85%もいるのだ。

とはいえ普遍的な現金給付もバラマキという批判を生みやすく(とはいえこの批判も当然だ。住民税均等割があるので、集めたものをただ返すようなもので、壮大な無駄である)、普遍的な現物給付を志向したい。富裕層にとってもメリットがあるような質の高い公的教育を普遍的に実施してほしいと思う。

なお、選別主義でうまくいっている国としてオーストラリアを挙げられている。オーストラリアでは選別主義が徹底しており、公的年金でさえも高所得者層は受け取ることができないという。オーストラリアにおける選別主義の特徴は、「受け取る人を選別する」のではなく、「受け取らない人を選別する」という点だ。このような選別では、選別主義の欠点である漏給やスティグマの問題は生じにくい。

ただ、普遍的な現物給付のみでは、貧困で欠ける生活のすべてを賄うことはできない。そこは選択的な現金給付で補う必要がある。これは著者の主張というわけではないのだが、スティグマを産まないためには負の所得税といった制度を検討してもよいかもしれない。その際は資産課税もあわせて検討することが必要だろう。

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